Covid

Covid-04~異世界転生した理由~

Covid-03~ジャンヌ・ダルク~https://www.hassiy2.com/covid-02/「ありがとうございましたー」 愛想の良い店員に見送...

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<title>地球人日本国民シャルル・ド・モンテスキューの視界の構成</title>
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 <h1>Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua. Ut enim ad minim veniam, quis nostrud exercitation ullamco laboris nisi ut aliquip ex ea commodo consequat. Duis aute irure dolor in reprehenderit in voluptate velit esse cillum dolore eu fugiat nulla pariatur. Excepteur sint occaecat cupidatat non proident, sunt in culpa qui officia deserunt mollit anim id est laborum</h1>
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 謎のアルファベットがざっと流れては、消えて、流れては消えてを繰り返す。htmlってどっかで見たことあるぞ。確か、プログラミング言語じゃなかったっけ?

「htmlとcssは厳密に言えば、プログラミング言語ではないの。正確にはマークアップ言語と呼ばれているな」

「htmlが世界の骨格を定めて、cssがデザインを決めて、動的動作をプログラミング言語で動かしているわ。ジャンヌのお店ではpythonを使って眼球を動かしているの」

{}←通常では使わないカッコの記号がばばっと並ぶ。全部表記してもいいが、如何せん動きが早すぎて読み取ることができない。

「シャルルの視界を構成するまで少し時間がかかるな。その間に対価について話をしようか」

 視界の半分がアルファベットと記号塗れで、まるで入れ墨を入れているかのようなジャンヌの顔がにやにやと歪む。

「か、金はねえぞ。一文なしの素寒貧さ。俺は残念ながら、ギザ十さえも持っていないんだからな」

ギザ十を持って異世界転生を果たした某主人公が羨ましいぜ。こちとら視界の半分がアルファベットと記号で埋まっちまっている。どうやら、物語を描く作者の力量で天と地の才能の差が出るらしい。おい、こんな世界に異世界転生させた作者め、出てこいよ。お前の目玉も引っこ抜いてやるぞ。ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲえっていうフレーズで有名な妖怪の親父にしてやるんだからな。

「うちは金が欲しいんじゃない。金では買えないものが欲しいんだ」

「プライスレス、買えるものはハイパーカードでってか? 残念ながら、俺はクレジットカードは持ってないんだ。未成年だからよう」

「ハイパーカード? 地球ではそんなカードで物をやりとりしているの? 全く、遅れているわね。まさか、まだ紙とか金属のコインを使った現金とかいう奴で取引しているんじゃないでしょうね」

「そのまさかだよ、日本にはまだ現金主義者が山のようにいるんだ。国はキャッシュレス決済を促しているが、現金じゃないと物やサービスを購入できない店も多い」

 マリアは呆れたように天を仰ぎ、ジャンヌは嘲るように嗤った。

「シャルル、この世界ではねえ。もう現金の価値は下がっているんだよ。あんなもん只の数字に過ぎないし、女王陛下にお願いすれば、簡単に数字を増やしてもらえるからね」

 そういえば、日本も同じようなことをやっていたのを思い出す。特別給付金の財源も確か国債という奴で、その国債を日本銀行に買わせていたんだっけ。あっそーさんが刷れって言えばいくらでも刷れちゃう日本銀行
券。そんなものをありがたく頂戴する国民は国に踊らされている間抜けなのかもしれない。まあ、俺も欲しいけどさ、日本銀行券。この世界じゃあ有効じゃないみたいだけどね。

「うちはそんな数字よりも、もっと魅力的なものが欲しい。それはね、お前の血だよ。シャルル」

「ふぇええ? 俺の血? この暗黒界の女神に愛された永遠なる童貞の魔法使いの血が欲しいと言うのかね」

「ちょっと、ジャンヌ本気? こんなキモい童貞の血なんて本当に欲しいの?」

 ああ、マリア様。頼みますから、そのキモいという言葉だけは止めてくださいまし、俺の心は結構硝子のハートなのよパリン。

「いやあ、この間まで契約していた男の子の血を夢中になって吸ってたらね。吸い殺しちゃってさ。このままだと餓死しちゃうんだよねえ。それに、マリアはキモいっていうけど、うちはこういうちょっとおもろい奴好
きやで」

 ちょちょちょっとまてーい。好きって言った? 今、好きって言ったよな。女の子に好きって言われたの初めてなんだけど。というか、吸血鬼だけどさ。恋愛対象にはなるよねもちろんセック――。

 マリアのグーパンチが鼻にもろに当たって、言葉の続きが上手く出てこない。はてさて、俺はなんて言おうとしたんだろうか。というか、好きという前にもっと大事なことを聞き漏らしたような……。

「それで、どうや。シャルル。うちと吸血の契約を結ばないか? 週に一回くらいで構わないんだ。もちろん、吸い過ぎて殺さないようには気をつけるさ。悪くない提案だと思うがね」

「シャルルはお金がないから、受けるしかないわよ。それとも、ゴブリンの眼球にするの? あれって凄く臭うし見える色彩も茶色しかないの。まるで、う○この中で生活しているみたいって専らの噂よ」

 いやあ、う○こはひでえだろ。ゴブリンに謝るべきだよ。でも、ここは機械眼球を是非とも手に入れたいな。響きが良いじゃねえか。そして、かっこいいだろ。

 小さな駆動音が聞こえてきて、しばらく、続いていたアルファベットの羅列が消え去った。そして、左目に映る景色が同期していく。色彩もまるで水に絵の具を溶いたかのようにじんわりと淡い色から順番にその色合いを深めていく。ジャンヌの髪の色が#d3381cというカラーコードが表示され緋色であることが分かった。瞳の色は#00a968エメラルドグリーンである。一方のマリアは#e9bc00トパーズ色の髪を持ち、瞳は#a4a8d4ブルーラベンダーの色合いをしている。どうやら、機械眼球はしっかりとカラーコードが表記されて文字列だけでも色彩が判別できるようになっているらしい。

「なあ、シャルル。良いことを教えてやろうか」

 ジャンヌは#f3a68cサーモンピンクの唇をにやにやと開きながら、ぎらりと光る#bbdbf3フロティスブルーの牙をちらつかせながら、口元を俺の耳に近づけた。

「目閉じたまま、眼球に手をやって、反時計回りに十回カチカチと捻ってみな」

 ジャンヌに言われるがまま、眼球に手を当てて、軽く捻るとカチカチと歯車が回るように眼球が回転するのが分かった。目を開くと視界の上部に十という数字が表示されている。

「なっ!」

 驚きの光景が広がっていた。なななな、なんと、マリアたんの服が透けているのである。#c7a5ccアイリス色で統一されたデザインはクラスメイトの制服の端っこから覗いたどんな下着よりも大人びていて、男の目線を如何にも引きそうなレースが襞のように折り重なっている。ブラジャーの方は見たこともないようなジャンボサイズで、俺が手を広げても収まりきれないほどである。それにも関わらず、ブラのカップから乳が溢れでそうになっていて、もう少しで見えてはいけない#eb6ea0チェリーピンクのその先っぽが見えそうになる。安心しろ、俺は健全な男子だから、見えそうになったら、きちんと海苔を貼って修正するからよ。

「安心しろじゃないわよ! このド変態が!! 今すぐ、その機械眼球を破壊するわよ」

「ふははは、できるものならやってみろっていうんだ。もう、目の中に収まってしまったのだ。これは俺様のものだ」

「まあ、実質的な所有権はマリアにあるからねえ。マリアには遠隔操作ができる権限を与えておくから、消去したくなったらいつでも自爆スイッチを押すといいよ」

 ほへえ? 自爆スイッチって何ですか?

「情報漏洩を防ぐために、この世界に存在するありとあらゆる機械デバイスには自爆装置が埋め込まれている。それで、情報を削除するのさ。普通は破棄するときにやるんだけど、眼窩に入れっぱなしだったら、脳みそ
も吹き飛んじゃうかもね」

 このデータは三秒後に自動消去される。ぼわーんって煙が出てくる大人気アクション映画的な設定かよ。しかし、ここまで表現できる技術力を持つ相手だ。出来ないわけはないだろう。

「お許しください。マリア様。今すぐに、機械眼球の透過濃度をゼロに戻します」

 俺は脳みそが吹き飛ばないうちに、機械眼球に手を当ててダイヤルをゼロに戻した。

「それで、シャルル。血は差し出す覚悟は出来たかい?」

「吸い過ぎて殺さない?」

 俺は怯えきった猫のように体を縮こませながら、ジャンヌに訊ねる。吸い過ぎて殺しちゃった件はちゃんと聞いてたからな。

「冗談だよ、冗談。うちが吸血するのは人間オンリーだからね。他の動物では体が満足に栄養を補給できないんだ。そうだね、この硝子の小瓶一つくらいで一週間は持つね」

 ジャンヌが左右に振っているのは、機械眼球が入っていた瓶である。量的には、献血で提供する四百MLよりは少ないぐらいだろうか。

「まあ、そのくらいだったら死にやしないだろうから、大丈夫かな」

「よーし、じゃあ、契約成立な。それじゃあ、そいつをシャルルが使えるようにチューニングするから、少しの間待っていてくれ」

 ジャンヌはそう言うと無遠慮に俺の左目に指を突っ込んで引っこ抜こうとする。いやあ、だから、そういうボケは止めてよねえ。右目だから、右目!

「おっと、失礼。ついつい、君の視界を奪いそうになってしまったよ」

「まあ、私は全然構わないけどね」

 どうして、この世界の女の子たちは俺に冷たいんだ。いや、現実世界の女の子たちも冷たかったけどさ。異世界に来て、シャルルという名前も手に入れたのに、残念な人扱いって酷くねえか。女神様よう、あんまりじ
ゃねえか。

 俺がしょぼーんと落ち込んでいると、マリアがちらりと俺の方を見ながら、乱雑に背中を叩いた。

「変わればいいでしょう。私はシャルルを変えることはできないけれど、シャルルは自分を変えることができる。この世界に来て確かに異能の力を手にした人間はいるわ。でも、そういう人って努力しないのよね。手に
入れた力に満足してしまう。だから、せっかく手に入れた異能の力も萎んでいってしまうのよね」

「そんなやつがいるのか」

「ええ、かつて私の相棒がそんな奴だった」

 マリアは目を細めながら遠い方を見やった。相棒というのは文字通りの意味なのだろうか。あるいは、恋人かそれに類するものなのだろうか。真相は定かではないが、流石のシャルルもそれは聞いてはいけないことだ
と分かる。

「そうか、変わればいいのか。でもさ、どんな風に変わっていけばいいか分からないよ」

「ふん、そんなこと簡単じゃねえか」

 ジャンヌがふんと鼻を鳴らしながら、得意げに胸を張って答える。

「物語の主人公になればいい。周囲のキャラクターを引っかき回しながら、強い敵を倒して成長していけばいい。そのために、主人公はいるんだよ」

 俺が物語の主人公? 異世界転生したばかりの頃はそんなことも頭に過ったが、身分不相応であるということは重々承知だ。何のスキルもねえ、見所もねえとくれば、始まりの町で天気の話しかしない少年のポジションが性に合っている。

「シャルル、あなたはモブじゃないわ。私は明確な意思を持って、あなたをこの世界に召喚したの。この世界のことを話しておくわね。名前は惑星コロナ。地球と兄弟星になるはずだった、失われし星なの」

 失われし星だと? 失われたのなら、どうしてこの世界は存在するんだろうか。消え去ったのなら、マリアもジャンヌも俺の目の前にはいないってことになる。でも、視界は半分になっちまったが、ちゃんとマリアもジャンヌも輪郭があるじゃねえか。

「そのとおり、輪郭はちゃんと存在している。でも、私たちの星は色々なものが抜け落ちているの。例えば、色は他の動物や機械眼球に頼らないと手に入らないし、人間という種族はほぼ存在しない。住民の八十五パーセント以上は何らかの異常を抱えている。私の場合はエルフの癖に自力で魔法を使うことができない、ジャンヌの場合は血を吸わなければ生きいけないという呪いがかけられている」

「なあ、俺はなんのために呼び出されたんだ。何か理由があって、異世界転生をしたんだろう」

「そうよ、あなたにやってもらいたいことはこの世界を地球にすること。つまりは、現在地球と呼ばれている星を滅ぼすことなの。そのために、あなたの力が必要なのよ」

Covid-04~異世界転生した理由~



オコ
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 この物語は『インフルエンサーノベリスト』橋本利一の提供によってお届けしております。インフルエンサーノベリストとは自分に影響力を与える物語を自分で書く、影響力は伝播するからきっとあなたにも届くはずをキャッチフレーズとして執筆活動を発信する小説家という意味です。