雑記

メメント・モリ

死を忘るなかれ

オコ
オコ
橋本の本業の課長が亡くなりました。

オコ
橋本の頭の中に住んでいるオコジョ。

おこじょもいつかは死ぬ。

橋本利一
橋本利一
入社以来、机を並べて、同じ目標に向かって仕事を続けていたんだ。
3月までは班長だったのだけれども、評価されて課長に昇進したばかりだった。

橋本利一
インフルエンサーノベリストを名乗る小説家。
香典袋には1万円を包んだ。

オコ
オコ
くも膜下出血による突然死でした。病院に運ばれたときは、意識もなくて、自発呼吸も失われていたそうです。
橋本利一
橋本利一
数日前から頭痛がすると訴えていたらしい。
課長になってからは、部署が変わっていたから、僕が気づくことはできなかった。
僕に何かできたことはなかったのか……。
考えてしまうよね。
オコ
オコ
橋本にできることはありませんよ。
部署が変わって離れてしまえば、予兆を感じ取ることはできませんし、他人の体調の急変を救うことは難しいことです。
橋本利一
橋本利一
でも、死んじゃうなんて、あんまりじゃないか!
優秀な人だったんだ。
僕は、本業が嫌いだけど、本業で働く人が全て嫌いなわけではない。
オコ
オコ
良い人ほど、優秀な人ほど、早く亡くなってしまう場合がある。
こればかりは、どうしようもない出来事です。
橋本利一
橋本利一
式と名の付くものは出たくないなと思った。
結婚式は金を毟られるし、葬式は哀しい。
通夜に出て、通夜振舞いとして、御馳走が出たけれど、ほとんど食べることができなかったよ。
上司の顔には死化粧が施されていて、白っぽかったけれども、生きている頃と変わらなかった。
オコ
オコ
55歳。葬儀の日は丁度、56歳の誕生日でした。
ご霊前には、焼き立てのステーキとお寿司、誕生日ケーキが並んでいました。
橋本利一
橋本利一
遺体と対面したときに、僕は声に出して礼を言った。
涙があふれて、目の前が見えなくなって、頭が真っ白になった。
言葉を操る者としてみっともなかったけれど、最期だからきちんとお礼を言ったんだ。
言葉は声に出さないと届かないだろう?
生きている人でさえ、言葉足らずのこともある。
亡くなったら、もっと届かないと思ったからね。
オコ
オコ
声に出してお別れを言ったのは橋本だけでした。
橋本利一
橋本利一
物語でも死を扱うことはあるけれど、僕が描いていた死はまだまだ甘いなと思った。
重厚なる哀しみと、失われるというリアリティを追求していこうと思う。
それが、僕にできる精一杯な弔いだと思う。
オコ
オコ
橋本の頭の中にある森では仲間が死ぬとドングリを地中に埋めるんです。
ドングリは私たちよりも遥かに長く生きます。
そして、たくさんの実を付けて、森を豊かにしてくれるんです。
橋本利一
橋本利一
僕もドングリを埋めよう。
僕の人生に良い課長がいて、社会を豊かにするための良い仕事ができた。
それを忘れないために、ドングリを植えるよ。